「蚊」対策(4) ビール好きが蚊に刺されやすい理由
蚊が人間を見分けるのは「二酸化炭素」「汗」「体温」です。特に二酸化炭素が遠くまで届くため、蚊が人間を察知する最初の手がかりになります。
ビール好きな人は蚊に刺されやすいと言う定説がありますが、これは決して都市伝説ではありません。ビール自体が炭酸ガスを発生することもありますが、お酒を飲むと体がアルコールを分解しようとして呼吸が速くなり、たくさん二酸化炭素を放出するためです。また、お酒を飲むことで体温が上がって汗をかきやすくなります。蚊が人間を検知する「体温」「汗」「二酸化炭素」が優位に上昇する条件が、お酒(特に炭酸系のビール)を飲む人に当てはまるからです。
運動直後に蚊に刺されやすくなるのも、呼吸や体温、汗といった要素が揃うためです。
ほかにも「O型の人は蚊に刺されやすい」という話があります。こちらも真偽のほどは定かではない話なのですが、統計学的にも医学的にも血液型による刺されやすさの違いはあるようです。血液型によって血液に成分差があることに理由があるようですが、それが「なぜ」なのかははっきりしていないようです。
「蚊」対策(5) 虫刺されを予防するには?
蚊が人間を検知する三大要素が「二酸化炭素」「汗」「体温」とお話ししましたが、人間は呼吸を止めることはできませんし、体温を下げることもできません。ビールを飲まないことで多少の蚊対策にはなるかもしれませんが、それも一要素にすぎません。この中で最も有効なのは「汗」の対策をすること。汗をかいたままの皮膚と、シャワーできれいになった皮膚とでどちらが蚊に刺されやすいかを比較検証した実験では、清潔な皮膚の方が圧倒的に蚊に刺されにくい結果が出たそうです。
汗をかいたらこまめに拭く、シャワーで洗い流すなどの対策と同時に、屋外で活動する時には肌を露出しないようにするのも大切です。蚊は色を認識せず、色の持つ波長で人に近づいてくるとのこと。白などの明るい色の方が刺されにくく、一方で黒などの濃い色の方に反応します。なるべく白っぽい色の薄手の長袖を着用することが、蚊対策に有効です。
「蚊」対策(6) 蚊に刺されたらなぜ腫れる?
蚊に刺されたら皮膚が痒くなって腫れるのはどうしてでしょうか。これは一種のアレルギー反応だと言われています。蚊が人を刺す時には、口の先にある針を皮膚に刺し(この針は6本あります)、血管から血を吸い上げる時に、自分の唾液をヒトの血管に注入します。これは、自分の唾液と混ざった血液を吸うことで血液が固まらないようにするためだと言われています。
蚊に刺された後に痒くなったり、腫れるのは、蚊の唾液という異物が体内に注入されることによるアレルギー反応が生じるからです。
ちなみに腫れ方にも二種類あり、刺された直後から赤くなったりふくれたりする「即時型」は、1〜2時間で症状が治まるケースが多く、冷やしたり、メントールの入った塗布薬で症状が改善します。一方、1〜2日後に反応が現れる「遅延型」は、血管の周囲に炎症が起こって、炎症が起きた周囲の皮膚が硬くなり、痛みを伴います。遅延型は主に乳幼児に見られがちで、蚊に刺され慣れないことから反応が大きくなるようです。
痒くなった時に掻きむしると、炎症が起こって化膿したり、「とびひ」になるなど、症状が悪化するので、患部を清潔にする、薬を塗る、冷やすなどして、あまり掻かないようにしましょう。
「蚊」対策(7) 蚊に刺されやすい気温と時間帯
日本にいる代表的な蚊は、「アカイエカ」「チカイエカ」と、ヤブ蚊の一種である「ヒトスジシマカ」です。
このうち、家の中に入ってくるアカイエカは、主に夕方から明け方にかけて活動します。夜寝ている室内で「ブ〜ン」という不快な音は、蚊の鳴き声ではなく実は羽音なのですが、人間にとって不快な周波数でよく耳につくと言われます。アカイエカは20〜30度で活発に活動するので、冷房の効いた室内でも生息します。また、主にビルの地下などに生息するチカイエカは、低音に強いので、冬季でも活動します。
一般にヤブ蚊と言われる「ヒトスジシマカ」は、25〜30度の気温を好み、明け方から昼前にかけてと、夕方から夜間にかけて活動が活発になります。真昼に活動しないわけではないのですが、気温が30度以上になると活動が鈍化するため、昼間の時間帯は夕方よりも発生しにくいということができそうです。
「蚊」対策(8) 実は恐ろしい蚊
夏はほぼ誰もが虫刺されを経験すると言ってもいいほど、蚊は日本人にとって馴染みの深い生物です。しかし、油断は禁物です。蚊は感染症を媒介する性質があるからです。
ヤブ蚊として知られる「ヒトスジシマカ」はデング熱やウエストナイル熱の媒介蚊です。ほかにも、黄熱病、日本脳炎、マラリヤ、ジカウイルス感染症なども蚊によって感染します。
蚊によって媒介される感染症の多くは、熱帯地域やアフリカなどで流行しますが、アジアでは日本脳炎とジカウイルス感染症の発生が認められています。また、日本でも2014年にデング熱の感染例が確認されました。デング熱はジカウイルス感染症はワクチンがないので、蚊に刺されないこと以外の予防法がないのが現実です。
「蚊は世界で最も人間の命を奪う動物である」という言葉がありますが、これはデング熱やマラリヤなど、蚊が媒介する感染症での死者が世界全体を見てとても多いことに由来しています。気候変動や人の移動領域の拡大によって、感染症が世界的に蔓延する状況をこの数年のわたしたちは知っています。「たかが蚊」と侮ることなく、その危険性をしっかりと認識し、対策をしていくことが大切です。
「蚊」対策(9) 蚊の発生源
よく、草むらやヤブに入ると蚊に刺される、と言いますが、実は蚊の発生源は草ではなく、水場です。蚊は卵を水の中に産卵します。草は蚊の休息場所で、発生源は水たまりなのです。ですので、蚊を駆除するならば、家の周囲にある汚い水たまりをきれいにすることが先決です。
・水たまり
・側溝
・雨水マス
・バケツ
・古タイヤ
・墓場(供花の水)
・空き缶、空きペットボトル
・植木鉢の受け皿
・境界ブロックの穴
このようなところに蚊が発生しやすいので、水がたまらないように、日に当てて、乾かすようにしましょう。
「蚊」対策(10) カラダも室外も清潔が一番!
蚊の種類によって、きれいな水場を好むものから、汚いところを好むもの、広い水場で生息するもの、少しの水があればそこで孵化するものなど、さまざまです。ただ、清潔で風通しがよいところは、そうでないところに比べて蚊は発生しにくくなります。
そのため、蚊の発生しやすい夏季は、水がたまるようなものを家の周囲(網戸の近くなど)に置かない、草むしりをこまめにする、風通しをよくする(見通しをよくする)ことを心がけることが大切です。
また、人も、汗をダラダラかいて体温が高い状態ですと、蚊が近寄りやすくなります。運動や外出などで汗をかいた時には、室内に入ったら早めにシャワーを浴びて清潔にすることで、蚊に刺されにくくなります。
家の周りから全ての水たまりや、草や植物を排除することは不可能です。ポイントをしぼって、蚊の室内侵入を防ぐことで、不快な状況への対処が可能になります。
「蚊」対策(11) 室内への侵入経路
蚊が家に入ってくる場所は、玄関、窓、人の体にくっついてくる、そして洗濯物を室内に取り込む時など、さまざまです。特にコロナ対策もあって、換気をすることも増えていますので、室内への完全なシャットアウトは難しいのも現実です。
前回にも書いたように、ベランダの窓の近くに植木鉢の水うけなど、水がたまるものを置かないことや、外周の草むしりをこまめにすることで、侵入防止については一定の対策になります。
また、玄関や網戸に吊るすタイプの防虫剤も有効です。網戸の場合はマジックテープ式で外側と内側に防虫剤がついていて、侵入前に蚊を忌避することができます。玄関はドアノブなどに吊るして玄関に蚊が近づかないこともできます。ただし、これらは蚊に対する効果は限定的で、ユスリカやハエなどに対する忌避効果がメインです。
万が一侵入してきたら、スプレータイプの殺虫剤をかけることも有効です。しかし、こうした殺虫剤に対して過敏な方もいるので、ご自身のライフスタイルに合わせて、殺虫成分については検討していく方がよいと思います。
「蚊」対策(12) 風通しをよくすることは大切
では、室内に蚊が入ってしまったら、どうすればいいでしょうか。実際は蚊を殺す以外に刺されない対策はなく、窓を開けて追いやろうにも、窓を開けることで新たな蚊の侵入を許してしまえば、元も子もありません。
蚊は吸血することで体重が重くなり、動きが鈍くなります。吸われたらなるべくすぐ叩く! 寝室に入ってきてプ〜ンと嫌な羽音を響かせながら飛ぶ蚊ほど、憎たらしいものはないですよね。寝ている時の痒みは睡眠不足につながりますし、なるべく早く撃退したいものです。
蚊は風に弱いのと、光が変化するとそれに向かって動きます。懐中電灯をつけて扇風機を回すことで、蚊を見つけやすくなります。
殺虫剤を使うのは最後の手段です。人が呼吸で吸い込むことはなるべく避けたいものです。できれば翌朝、出勤でしばらくその部屋にいない時間帯に、ワンプッシュで殺虫できるスプレーを寝室に散布することで、退治できなかった蚊を殺してしまいましょう。
「蚊」対策(13)なるべく化学的な薬剤には頼りたくないが……
大丸建設は自然素材と無垢材を大切にし、化学物質過敏症に苦しむ方でも安心して暮らせる住まいを提供したいと考えています。家づくりにおいて、合成化学薬品を使わないことを心がけているので、蚊の対策もできるだけ薬剤を使わない、ナチュラルな方法をおすすめしたいと思っています。
その気持ちとは裏腹に、薬剤を使わずに暮らしていたら、大量の蚊に刺されてしまい、お子さんが「とびひ」になって結果的に医師から強い薬剤を処方されてしまった……というお話を聞くこともあり、自然との共存の難しさを感じる面もあります。特に温暖化が激化してしまっている昨今、蚊による伝染病の媒介リスクはかつてより上がっているため、薬剤を使ってもしっかり虫除け対策をする方がいいのか、あくまでもナチュラルな手法で効果もやわらかな方向性を目指すのか、一人ひとりの価値判断が必要だと思います。
私のブログではなるべくニュートラルに、いろんな情報をお届けできればと思います。
「蚊」対策(14) 薬剤を使った虫除け
夏場にはドラッグストア等でたくさんの虫除けが販売されています。
昔からあるのは渦巻き型の「蚊取り線香」ですね。緑色の蚊取り線香はピレスロイド系の薬剤を使っており、着火することで煙とともに殺虫剤が蚊の皮膚や口から神経に作用して殺虫します。予防+殺虫を兼ねることができるのが特徴です。天然素材のものは「除虫菊」という商品名で販売されています。
電気や電池で薬剤を空中散布して、殺虫&予防効果のある虫除けも各社から販売されています。火気やにおいが気になる方におすすめです。
ワンプッシュして効果が数時間長持ちするスプレータイプの殺虫剤は、1シーズンで1本あれば十分に事足りるほど、殺虫効果が強いです。蚊に直接噴射することで即撃退することができるものもあります。部屋に薬剤散布する時は、外出前など、人間が直接吸い込むタイミングは避けましょう。
肌に塗布するタイプの虫除けで有効成分が高いのはディートが含まれているものです。ただしこれには副作用があり、濃度が12%以上のものは「医薬品」、10%以下のものは「医薬部外品」として扱われます。濃度は持続時間の違いですが、医薬品は生後6カ月未満には使用しないこと、12歳未満も回数が制限されていますので、気をつけて使いましょう。
網戸や玄関に吊るすタイプのものや、網戸に貼り付けるものは、主にユスリカやハエ対策のもので、蚊に直接的に効果があるものではないので、購入時には注意が必要です。
その他、側溝等に使用する薬剤(錠剤や液剤)もありますが、個人使用は避け、自治体や害虫駆除専門業者と相談のうえご使用ください。
「蚊」対策(15) 薬剤を使わないナチュラルな虫除け
自然素材活用派の大丸建設としては、化学薬剤を使わないナチュラルな虫除け方法もご紹介したいところです。
まずはアロマミストです。雑貨店などでも販売されているナチュラルなスプレーは、蚊が忌避する香りが含まれており、シトロネラやユーカリ、ペパーミントなど、人間にとってはさわやかで心地よい香りがするものが多いです。ハッカ油なども蚊がきらいな成分なのと、清涼感があって、ナチュラルな虫除けとして人気があります。
手作りコスメ派にはドクダミチンキはいかがでしょうか。すでに季節は終わってしまいましたが、6月ごろから自生するドクダミの花をアルコールに1カ月以上浸すと、痒みを抑える成分が抽出されます。刺された時にシュッと一拭きで痒みを抑えましょう。
最近注目なのはオニヤンマのレプリカです。蚊の天敵はオニヤンマということで、アウトドアに出かけると帽子やテントにオニヤンマのレプリカが吊るされていることが……。効果は人によりますが(笑)、実際に「効いたよ!」という声もあるので、気になる方はぜひ試してみてください。
「蚊」対策(16) 虫に刺された時の薬
蚊に刺された時には、市販薬等で素早くケアするようにしましょう。蚊はかきむしって「とびひ」になってしまうと、その後の肌トラブルが大変です。「とひび」になってしまった場合、小さな子は保育園に行けなかったり、入浴に不便するなど、日常生活に支障をきたします。刺されたら早めに対策しましょう。
昔ながらの「キンカン」や「ムヒ」「ウナコーワ」などの薬剤は、どの家庭にも1本はある虫刺され薬ではないでしょうか。いずれにも清涼感を与える「メントール」と「カンフル」が含まれることは共通していますが、痒みをおさえる有効成分が異なります。
「キンカン」は痒みをおさえる成分としてアンモニアが、また皮膚の刺激成分として「トウガラシチンキ」が含まれているので、独特のにおいと刺激があります。ムヒにはステロイドが含まれ、痛みを伴う虫刺されにも効果的です。ウナコーワは痒み止めに特化したシンプルな処方が特徴です。
化膿したり炎症を起こすなど、ひどい虫刺されには医師による診断と処方が必要になります。市販薬のみに頼らず、専門家による治療で早く対策しましょう。
この夏の間、ずっと蚊に関する情報を発信してきましたが、これで最後です(笑)。ぜひ来年の夏も読み返してみてください。