愛着がわく家づくり
朝日新聞×匠の会 紙上セミナー
Vol.1 木にこだわる
産地直送の木で家をつくる匠
一生に一度のビッグプロジェクトともいえる家づくり。
せっかくなら、とことんこだわって、子供から孫へと家族が愛着をもって住み続けられる家をつくりたい。
和歌山の森から各地の工務店へ、良質な国産無垢材を直接提供する、山長商店社長の榎本長治さんが、「木にこだわる、本物の家づくり」について語る。
山長商店 代表取締役社長
榎本長治さん
えのもと・ちょうじ/和歌山県生まれ。1996年から現職。植林からプレカット加工までの一貫体制の確立、国産平角材で日本初のJAS規格の取得などで、国産材の信頼性を高める。日本林業経営者協会会長。
森林から各地の工務店へ
ダイレクトに木を届ける
農産品や海産物を買うとき、産地を気にする人は多いようです。
「なるべく安心な国産を選ぶ」という人もいます。でも家の構造材となる木はどうでしょうか。
大切な家族と財産を守るものですから、どこで育ったものなのかにこだわって、家づくりをして欲しいです。
現在、日本の木材自給率は3割に達していません。
住宅建材のほとんどは輸入材です。それも薄い板を貼り合わせた集成材がおもに使われています。輸入材に比べて、国産の無垢材は供給体制が不安定だったり、品質にばらつきがあったりするケースがあるからです。
しかし今、日本の森には成熟した木が余っています。
戦後、植林された木が50〜60年たって伐採期になっているのですが、有効に使われていません。森は適度に木を切ってやらないと、新しい木が育たず、荒廃していきます。その結果、林業も衰退し、ますます森が荒廃する悪循環に陥ります。若い木が育たないと、森全体の二酸化炭素(CO2)吸収能力も下がります。森の荒廃は、土砂崩れや洪水などの原因にもなります。森を健全に維持するには、成熟した木を切って、新たに木を植え、育てていく、という循環が何より大事なのです。
もっと国産材を使ってもらうためには、木材のことをよく知っている職人の力が必要です。そこで、1997年からそのような職人のそろう匠の会と、山長商店は提携し、新しい取り組みを始めました。私どもは製材やプレカット加工までグループ一貫体制で行い、匠の会加盟工務店にダイレクトに木材を届けます。
それにより、産地直送の顔が見える家づくりが可能になりました。
森で自分の目で木を見て
こだわりの家を建てる
山長商店では、原産地表示はもちろん、一本一本の含水率や強度を測定して結果を印字し、木材性能を見える化しています。部材の素地を生かす高度な乾燥技術を開発し、最新の機械を導入してプレカット加工を合理化しました。そのうえで熟練した職人の厳しい目で検品、選別をしています。このような努力により、高品質な国産無垢材を、安定的に各地の工務店に届けられるようになりました。
樹齢を重ねた木のなかにはたくさんのCO2が蓄えられています。
木で建てた家が何百年と立っていることは、CO2を固定化していることになり、地球温暖化の防止につながります。都会に私どもが提供する無垢の木をふんだんに使った家を建てることは、和歌山の森を都会に移し、未来に受け継いでいくことだともいえます。地方の森が都市の人々の暮らしを守り、都市の人々の暮らしが地方の森を育てる私どもの取り組みは、林産地と都市を循環させるビジネスモデルとして高く評価され、2013年度のグッドデザイン賞を受賞しました。
これまで、林業に携わる者は、目の前にある木が最終的にどのようなかたちで使われるのかが分かりませんでした。それが今は、「この木は柱になる」といったことが分かります。多くの工務店の社員や大工さんに森に来ていただき、林業や木材のことをより深く知ってもらえるようにもなりました。最近は、和歌山の森まで、自分の家に使われる木を見に来る人もいます。自分が実際に森で見て、触り、匂いをかいだ木が、自分の家になるという体験は、家づくりの大きな思い出となるでしょう。
家づくりはこだわりを持つほど、愛着もひときわ増すのではないでしょうか。(談)
愛着がわく家づくり
朝日新聞×匠の会 紙上セミナー 次回のテーマは 「木のよさ」 です。
どうぞお楽しみに。
協同組合 匠の会は、
こだわりのつまった愛着の持てる家づくりを目指すお客様のパートナーになりたい工務店集団です。「木にこだわる、本物の家づくり」をぜひ匠の会と一緒にカタチにしてみませんか?