朝日新聞×匠の会 紙上セミナー連動企画
愛着がわく家づくりWebセミナー
Vol.3 木造住宅の構造
「構造」に強い、勉強熱心な業者選びを
一生に一度のビッグプロジェクトともいえる家づくり。せっかくなら、とことんこだわって、子供から孫へと家族が愛着をもって住み続けられる家をつくりたい。
日本の木造住宅の技術を科学的に検証し、より地震に強い家づくりを目指す構造設計の専門家、山辺豊彦さんが「木造住宅の構造」について語る。
山辺構造設計事務所
山辺豊彦さん
やまべ・とよひこ/石川県生まれ。法政大学工学部建築工学科卒業後、青木繁建築研究室へ。1978年に山辺構造設計事務所を設立。日本建築構造技術者協会(JSCA)前東京代表。著書に『住まいを守る耐震性入門』など。
大工の伝統的な技が
科学的に検証される
家を建てるとき、間取りや外観、内装については熱心に勉強し、注文を出しても、柱、梁、床、屋根などの構造については施工者におまかせ、という人は少なくないようです。
でも長い年月にわたって快適に安心して暮らせる家をつくるうえで、最も重要なのが家の骨格ともいえる構造です。内装や外観、間取りなどは後からリフォームでいくらでも変えられますが、構造部分を後から直すことはとても難しいのです。家を建てるときは構造についてもしっかり勉強し、チェックをしたり、要求を出したりすべきだと思います。
日本の木造住宅の多くは軸組み工法です。在来工法とも呼ばれるように、柱と梁でフレームをつくる日本の伝統的な家づくりをベースにできあがった工法です。ただし現在の木造軸組み工法は、基礎に鉄筋コンクリートを使い、壁の量を増やし、接合部を金具で強化するなど、耐震性の面で進化しています。
自然素材である木は、厳密にいえば一本一本、強度や収縮率にばらつきがあります。そこで家全体の強度を考えながら材料を吟味できる、現場の大工の力量が問われます。木造軸組み工法で使われている仕口、継ぎ手などの木組みの技術は世界に誇れるすばらしいものだと思います。しかしこれまでの日本の木造住宅は、大工の経験と勘によってつくられている部分や、強度などについてきちんと検証されていない技術もありました。
そこで私は20年くらい前から、大工とともに軸組み工法の様々な技術の役割や強度などを調べる実験をし、科学的な検証を続けてきました。
木造の住宅においても
構造計算ができる時代に
その結果、経験の積み重ねから生まれた大工の知恵のすごさにあらためて感動したことがあります。例えば、木材が乾燥することによってどれくらい変化するかを実験によってグラフ化したのですが、大工はその数値通りのたわみを考慮して、梁に使う木材を当たり前のように選んでいたのです。一方で、実験の結果、大工が考えているほど強くはない木組みの技術があることもわかりました。このような科学的な検証をえて、より強度のある接合の技術が研究・開発されています。
木材は繊維方向と、繊維と直交する方向とでは強度が違います。木造の家はRCや鉄筋コンクリート造りの10〜20倍もの量の部材が必要です。柱を1本増減したり、接合のしかたをちょっと変えるだけで力の流れが変わります。木造の家の構造計算は検討する項目が多く、本来とても難しいのです。それでも最近は、木造の家の耐震性が構造計算によって確認できるようになってきました。「匠の会」のみなさんのように、構造について熱心に勉強されている工務店も増えています。
一生に一度ともいえる家づくりは、ぜひ構造についてしっかり勉強し、信頼できる技術をもった設計者、施工者に依頼することをおすすめします。構造について気になることは、遠慮せずに何でも聞いてみることです。どんな質問にも嫌がらず、誠意をもって説明してくれる業者を選ぶことが大切です。(談)
愛着がわく家づくり
朝日新聞×匠の会 Webセミナー 次回のテーマは 「地震に強い家」 です。
どうぞお楽しみに。
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